9iNEと木材の組み合わせ

今回は9iNEと木材の組み合わせについて、まだあまり制作数は多くはありませんが木材による音の違いを解説・考察いたします。

これまで製作した9iNEの木材バージョン。

・ローズウッド(手違紫檀、インディアン、ホンジュラス)
・スネークウッド
・アフリカンブラックウッド
・ピンクアイボリー
・ココボロ
・リグナムバイタ
・花梨
・神代杉
・ゼブラウッド
・ジリコテ
・ビーフウッド

9iNEは他の634EARSの現行のモデルとは音の傾向が違うので木材の相性も少し違うなと感じておりまして、その音の違いを今後オーダーされる方には参考にしていただけたらと思います。

《9iNEの音の特徴》

9iNEが他のモデルの音と比べて大きく違う特徴として以下が挙げられます。

1)最低域と中低域がしっかりでていること。
2)高域がシャープで細く、低域は音が太いこと。

そしてこの2つの特徴は木材の選択で変わってくるところでもあります。

《前提》

まず確認事項というか前提として、「リア筐体で何か音が鳴っているわけではない」ということは間違えないようにしてください。

634EARSのユーザーさんは知っている方は多いと思いますが、リア筐体はD型ドライバーの振動板の動きを素材によって少しだけ変えます。

これについては以下の生地に詳しく書いているので気になる方は読んでみてください。D型ドライバーを境にしてフロント筐体とリア筐体で違いがわかるはずです。

ポイントは以下の2つです。

・リア筐体の「音」は聞こえない。
・D型ドライバーの動きが後ろ側の筐体の素材や厚みや形状や大きさによって変わります(影響を受けます)。

これらのことを知っている全体でこの後に木材のことを話しますのでご注意くださいませ。

《ローズウッド》

制作例は
・インディアンローズウッド
・手違紫檀
・ホンジュラスローズウッド

ローズウッドに共通していたのは音色がウォームで中低域がよく出ているということです。
少し音は太めで全体的にマイルドですが、低域~高域までの音のまとまりがよく音色に統一感があります。

一言でいえば「木材らしい」ともいえると思います。しかし、タイトさやスッキリさはないのでとても好みに左右されます。

個体差があるので種別の違いとはいえないかもしれませんが、インディアンローズウッドを標準的なローズウッドの木材だとすると、手違紫檀はもう少し明るくスッキリめ、ホンジュラスはもう少し落ち着いているように感じました。

似たような木材)
グラナディロ、ボリビアンローズウッド、サティーネなど。

ローズウッド系の木材)
・ウォーム
・マイルド
・音のまとまりや統一感
・最低域、中低域多め
・個体差大き目

《油分の多い木材》

制作例は
・ココボロ
・リグナムバイタ

これらはローズウッドよりもうすこし重さがあり油分が多い木材です。
ローズウッドよりも濃く強い音ですが、高域がマイルドでエッジがすこし丸い傾向にあります。
しかし、音の密度が濃いため中低音はより腰の強い音だと感じます。

これらのような木材は油分の含有量や乾燥具合で木材の硬さが大きく変わるので個体差が大きいです。

似たような木材)
オリーブウッド、パロサント、アフリカ栴檀など

油分の多い木材)
・濃く強めの音。
・高域はマイルド、エッジが少し丸い。
・中低音しっかり。
・個体差大きめ

《より硬く重い木材》

制作例は
・スネークウッド
・アフリカンブラックウッド
・ピンクアイボリー

これらはとても硬く重い木材です。特に硬さはトップレベル。

シャープでタイトな音です。低音も9iNEにしてはスマートだと思います。
高域は線が細くコントラストの高い音で、中低域は9iNEにしてはとてもタイト。スッキリしています。エッジがハッキリしていて少し硬質な音です。

似たような木材)
エボニー系、デザートアイアンウッドなど。

より硬く重い木材)
・シャープでタイト、エッジがハッキリした硬質な音。
・低域は比較的スマート。
・高域は細めでコントラスト高い。
・中低域は比較的すっきり。

《比重はそれほど高くないが硬い木材》

制作例
・ゼブラウッド
・ジリコテ
・ビーフウッド
・花梨
・神代杉

これらは比重はそれほど高くないが硬さがある木材です。

軽やかでキレのある音です。低音も9iNEにしてはスッキリしています。
音の密度はそれほど高くないですが、シャープで明るい音です。
他の木材ほどウォームさは感じません。

音の軽さや密度の薄さからLOAK-TやMIROAKでは少し使いどころが難しかった木材ですが、この9iNEではその軽やかですっきりした音がとてもマッチしています。

9iNEの特徴は持たせつつも、すっきりした音や軽やかな音を求める場合はこれらの木材はとても良いと思います。

特に神代杉は硬さが飛びぬけていてかなり全体的にスリムな音になります。

ただし、低域はそもそも9iNEは少しゆったりしているのでどんなに他の木材と比較してスマートだといえ、それでも9iNEの低域は量が多くゆったり目です。 なのでこのタイプの木材では高域がすごく軽くてしっかり出ていることで低域との音色の違いがあるなと感じます。高域がシャープでクール、低域がすこしウォームのような音色の違いです。ある意味デュアルドライバ―のような感じでしょうか。そこをプラスととらえるかデメリットととらえるかでこのタイプの木材の選択が左右するでしょう。

似たような木材)
パープルハート(これらよりすこし比重が重め)、屋久杉(これらよりさらに比重が軽い)など。

比重はそれほど高くないが硬い木材)
・軽やかでキレのある音。
・シャープで明るい音。
・低域は比較的スッキリ。
・高域と低域の音色がすこし違う。

《考察》

なんとなくですが9iNEにおける木材の特徴が少し見えてきました。

少し難しい言葉を使うと「弾性率/密度」の数値が高いほどスッキリとしている傾向にあると思います。
あとはこの数値が同じだったとしても元の比重の数字が高ければより濃い音という感じでしょうか。

木材らしいウォームでマイルドな音を望む場合は「ローズウッド」であったり油分多めの木材を選ぶとその傾向に近くなり、すっきりとした音色が良い場合は硬い木材を選びそのなかで比重による音の濃さがあるという感じだと思います。

ここに記載されていない木材でも、比重とヤング率をここに記載されている木材と比較すればその音の傾向がイメージできると思います。

ただし、木材には個体差がありますので、特にローズウッドやココボロなどはその時の状態で大きく音が変わると思います。 木材の状態も含めて細かい部分を知りたい方はオーダーの際にご相談いただければと思います。

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