新モデルTENORAのフロント筐体にはアルミを採用し、セミマットブラックのアルマイト処理を施しています。
アルミは密度が低いため、密度と弾性率から求められる音の伝搬速度(弾性率/密度)が高いのが特徴です。上位モデルのLOAKで採用されているチタンよりアルミのほうが音の伝搬速度は速いほどです。
比重が軽く硬いことから音の伝搬速度が高いので「振動をロスなく伝える」というフロント筐体に求められる条件の1つを満たしてはいますが、そのぶん振動の内部減衰率が低く振動をあまり吸収しないという欠点もあります。D型ドライバ―の振動を抑える必要のあるフロント筐体のドライバ―取付部分に使う素材としてはあまり向いていないとも言えるわけです。
そこでTENORAのフロント筐体にはアルミの弱点を補強するためにドライバ―の設置部分にステンレスを配置し振動を吸収する役割を持たせています。これはチタン筐体のLOAK2に採用している構造です。
下の画像の青い部分にステンレスを組み込んであります。そしてドライバーの側面とアルミ筐体の間には反発吸収素材があり、その反発力でドライバーに常に力が加わるように固定し振動も吸収するので、ドライバーの振動がフロント筐体になるべく伝わりにくい設計にしています。これによりブレのない明確な音とステンレス筐体のようなしっかりとした低音もある程度確保できるようになり、アルミ筐体のキレのある速い音も同時に実現することができます。