ROXA-S100の開発を進めるうえで、最も重要な要素のひとつがダイナミック型ドライバーです。
イヤホンの音を形づくる中心にあるのは、ドライバーそのものと、それを支えるフロント筐体の設計。この2つの組み合わせが、そのイヤホンの性格を決定づけます。
同じドライバーを使う理由
これまで私は新モデルの開発過程で、さまざまなドライバーや振動板をテストしてきました。
もちろん、まったく別の種類のドライバーを使えば、すぐに“違う音”のモデルを作ることは可能です。筐体設計をそのままにしても、ドライバーを入れ替えるだけで多種多様な音を生み出すことができます。
しかし、それは本当に良い方向の「違い」なのか?という疑問が常にありました。
実際にテストした多くのドライバーはどれも悪くはなく、70点くらいの「良い音」は出る。
けれども、MIROAK-IIやLOAK2で使用してきたドライバーのポテンシャルを超えるものは、ほとんど見つかりませんでした。


「新しさ」より「深化」
それならば、無理に新しいドライバーを使って“違う音”を作るよりも、
これまで培ってきたドライバーをより洗練させる方向へ進化させたほうが良いと考えました。
このドライバーの魅力は、音づくりの幅が広いことにあります。
太くてアナログ感のある音も、繊細で現代的な音も、どちらにもチューニング次第で導ける。
そして何より、長く使い続けてきたからこそ、癖も、限界も、改善の方向性もすべて把握しているのです。
MIROAK-IIからROXA-S100へ
ROXA-S100では、MIROAK-IIと同じドライバーを採用していますが、そのチューニングを見直しました。空気の流入量の調整、振動板の張り具合、筐体への設置などを改良し、結果として、MIROAK-IIよりも繊細でスマートな印象を持ちながら、高域はわずかにマイルドに抑えられています。これは、聴き疲れを軽減しつつ、より長時間のリスニングに適したチューニングです。
MIROAK-IIとROXA-S100には価格差がありますが、価格の低いROXA-S100のほうが音質面ではより洗練された印象を受けます。それは単なるコストダウンモデルではなく、「深化」を目的とした進化のかたちです。
「変えない」という選択の意味
ROXA-S100の音は、新しいドライバーを使わなかったからこそ生まれた音です。
派手なスペックの変更ではなく、信頼できる素材を磨き上げるように、これまでの経験の積み重ねによって作り出した“深化した音”を、ぜひ聴いてみてください。


