LOAK-T(OP) Ching-chan
Front : Titanium
Body : StainlessSteel
Rear(Wood) : Ching-chan
手違紫檀(チンチャン)を使ったLOAK-T(OP)。
この手違紫檀が絶妙にこのモデルの音と相性がよく、私が聴く限り現時点での634EARSで最高の音だと思います(私の好みもありますが)。
これは手違紫檀が最高の木材だというわけではなく、この個体(この木材ブロック)の状態がすこぶる良いという感じです。そしてこの木材と組み合わせたLOAK-T(OP)が絶妙です。
手違紫檀をいくつか在庫もっているのですが、この個体はとてもドライです。密度は本紫檀などにくらべるとすこし低いようにも思います。バチバチに密度高く木材が詰まっているのではなく中に適度な木管があります。木材の中に空間があるということです。
硬さだけでいえばココボロやキングウッドくらい。スネークウッドなどよりすこし硬さが低いかなという感じですが、削るとわかるのが適度な粘りがあること。シナりといってもいいかもしれません。柔らかいとはまた違う感じでしょうか。
スネークウッドやアフリカンブラックウッドなどは硬いけれどこのシナりがなく歪まないのでとても音がタイトです。ギュっと締まっています。中低域に特にそれがあらわれていて低音が膨らまずキレとスピード感ある低音という感じです。エッジも効いていて全体がシャープ。こういった硬い木材は歪まないので振動板の動きがタイトでこういった音になりやすいです。
それに比べてこの手違紫檀はドライで硬いことで中高域は上記の木材と同じようにシャープでパシッとフォーカスの合った音なのですが少し音に余裕があり余韻がとても美しいです。スーッと美しく消えていきます。
そして全体の音のメリハリがよく低域は適度に膨らみます。そのため低音は上記木材よりも量が多く感じるような印象です。木材の歪やすさが上記木材よりあるためか振動板がより大きく動いているような感じでドライバ―の背面の空気の取り込み量を増やしたようなのに近いですが、空気の取り込み量を増やしての場合は低音や音のメリハリは強くなっても繊細さや解像感は落ちてしまいますので、そこをキープしたままダイナミック感が強く感じられるこの木材はこのモデルに関してはメリットと言えるでしょう。
私は自分のLOAK-T(OP)にホンジュラスローズウッドとスネークウッドを2つ作って持っていますが、それらと聴き比べてると明確に違います。
ホンジュラスローズウッドはよりウォームでエッジも少しマイルドです。中低域のボリューム感などは似ていますが手違紫檀のほうが輪郭がはっきりしているのでキレやパンチがあり音のメリハリが強く感じます。またホンジュラスローズウッドよりこの手違紫檀のほうが音が明るく軽やかですね。
スネークウッドはもっと鋭くハッキリしていて音がグッと前にでてくるような感じです。この手違紫檀より明瞭さはありますがクッキリしてコントラストが強めです。また先ほども述べたとおり全体的にスマートでタイトなのでキレやスピード感などはありますが中低域のボリュームや全体の余韻などは控え目です。
好みの差ではあるのかもしれませんが、いろいろこのモデルを作ってきてこの手違紫檀のLOAK-T(OP)は気づいたらしばらく音楽を聴き入ってしまうような地味な良さがあり、これを聴いたあとに他を聴くと物足りないと感じるほど素晴らしかったです。
筐体背面のバックプレート部分の木材は全体の音の10-30%程度しか影響を与えないですし、よく聴かないと違いが判らなかったりもする部分ですが、このほんの少しの違いが全体に与える印象はとても大きいと改めて再認識しました。
自転車の部品を1つグレードの高いものに変えたときに感じる走りの違いに近いような感覚です。もしくは料理に使う塩や醤油やオイルを上質なものに変えたような感じにも似ていると思います。
ちょっとアツく語ってしまいましたが、ひとまず634earsの現時点での最高のイヤホンとしてこの手違紫檀を使ったLOAK-T(OP)をご紹介しました。
注意いしてほしいのは手違紫檀を使えば同じ音になるのではなく、この木材が最高に相性がよいということなので木材に個体差があることはご理解ください。
ちなみにこの手違紫檀はまだ同じ個体がありますので数個なら作ることは可能です。気になる方は是非お問い合わせください。