634EARSがイヤホンを設計するうえで何より大切にしているのは、ドライバーから音が出る方向と、音の出口であるノズルの方向を完全に一致させることです。これは新モデルROXA-S100の筐体設計でも「ダイナミック型ドライバーの設置方向」という重要なテーマのひとつでした。
ドライバーの向きが音に与える影響
ダイナミック型ドライバーをシングル構成で使用する場合、音の出る方向とノズルの方向が一致していることが特に高音域の再現性に大きく関わります。
逆に、両者がずれていると高音域が大きく減衰します。これは、高音ほど音の直進性が高く、進行方向に障害物があるとエネルギーが減衰してしまうためです。


「出ない高音」と「抑えた高音」はまったく違う
最終的なチューニングでは、ノズル内部のフィルターで高音をわずかに抑えることがあります。
しかし、「十分に出た高音をコントロールする」のと、「構造的に出ていない高音」はまったく異なります。
一見同じようなバランスに聴こえても、前者は伸びや透明感があり、後者は詰まったような“天井の低い音”に感じてしまいます。
フィット感と音質のジレンマ
10mmのダイナミック型ドライバーを使う場合、ドライバーの出音方向とノズルの方向を完全に一致させることは簡単ではありません。
なぜなら、ドライバーを正しい角度に配置すると、ノズルの位置が顔の正面方向からやや後ろへ下がってしまい、フィット感を損ねやすいためです。


ドライバーの方向を無視して設計すれば、耳へのフィット感は良くなります。
しかしその代償として、高域の伸びや抜け感が犠牲になってしまいます。
バランスを追求したROXA-S100の新設計
ROXA-S100では、音質とフィット感のバランスを両立させるための筐体設計をゼロから見直しました。
ドライバーの出音方向とノズル方向を一致させるこだわりを保ちながら、装着感を改善するために内部構造を数十回にわたり調整。
この開発に着手したのは今年に入ってすぐでしたが、理想の形状にたどり着くまでに半年以上の試行錯誤を重ねました。

試行錯誤から生まれるデザイン
市場に出ているイヤホンの多くは似たような形状をしています。中には同じ形をしたイヤホンも存在します。確かに、他社のデザインを模倣すれば短期間で製品を作ることも可能です。
しかし、私は、「自分自身で試行錯誤しながら形を生み出すこと」こそが本当のものづくりだと考えています。
イヤホンである限りオリジナル設計したものでも結果的に似たような形状になることは仕方ありませんし避けられないことですが、それを自分で試行錯誤し作り上げた形なのかどうかはとても大切です。


ROXA-S100の筐体デザインは、そんな信念のもとで繰り返しのテストから生まれました。
まだ100%完璧ではないかもしれませんが、音とフィット感の両立に真剣に取り組んだ“挑戦のかたち”です。
気になる方は、ぜひこのこだわりや背景から作られたイヤホンをチェックしてみてください。

