ダイナミック型ドライバーの振動について(その2)

ダイナミック型ドライバーが生じる「振動」について。2回目。

筐体の素材となる金属や樹脂や木材にはそれぞれ振動の減衰率が違います。例えば柔らかい木材や樹脂などは振動の減衰率も高いものがありますが、アルミなどは素材の減衰率は低いです。

しかし、振動の減衰率の低い素材ほど密度や硬さからなる音の伝播速度などがよく音響効果は高いものが多いです。

イヤホンのフロント筐体に使う場合はドライバーも組み込んで振動を抑えなければならないのに振動は減衰することなく早く伝わってくれたほうがよいという相反する2つの面を同時に持たせることが必要とされとても難しい問題です。

ドライバーの組み込み部分は多くのイヤホンの場合はフロント筐体として1ピースになっていることが多いです。

先ほどの2つの相反することを素材の求める場合、ドライバーを取り付ける部分と、その振動が正面にぶつかるカップ部分やノズル部分を別素材にすれば良いという考えもあります。

しかし、ノズルやカップとドライバーの取り付け部分が別々ということはその2つを結合するための組み合わせる設計をしなければなりません。

ノズル交換式の筐体などはネジ式になっていますが、あの構造にするためにはネジの凹凸(ネジネジ部分)以上の筐体の厚みが必要になってきます。

つまり筐体が大きくなったり厚みを持たせるようにしなければできないということです。そうなると今度は筐体の厚みやドライバーの配置位置に制限がでてきます。

例えば634earsのイヤホンではノズル部の部分は厚みは0.5mmです。この0.5mm内で完全密閉させるネジ構造にするのはとても難しく厚みを最低でも1mm以上にする必要がでてくるでしょう。そうなると金属素材によっては比重が高すぎて強くキツい音になってしまい音をコントロールしにくくなってしまいます。こういう音になることを考えると使える素材も限られてくる。

また、特にノズル部分は径の大きさに対して小さいイヤーピースを装着すると取り外すときにかなり大きな力が加わりますから強度の面でも1ピースのほうが無難であるのは間違いありません。

なかなか何をどうしようにもベストを見つけ出すのが難しい。

これらの点から634earsでは現時点では素材単体での振動抑制をすることをせず、ドライバーの取り付け方法で別の振動抑制を組み込むという複合的な振動抑制の方法をとっています。

これについてはまた後々説明しますね。

ひとまずここでは素材によって振動の減衰率が違うことと、減衰率の低い素材ほど音響的にドライバ―前の素材として適していることが多いので、振動を抑えることと音(振動)を伝えることの相反する2つを考えなければならないということが読んでる方に伝わればなぁと思います。

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