MIROAK-IIの樹脂ボディが作る音。

あらためてMIROAK-IIの樹脂ボディが作る音の魅力についてお話しします。

このイヤホンのリア筐体は、特にABS樹脂という素材に注目です。通常、金属素材と比べると樹脂は音質において劣る印象を持たれがちですが、MIROAK-IIではABS樹脂の特性を最大限に活かして、独自の音の個性を生み出しています。

試作ではポリカーボネート素材、レジン素材などを試しましたが、レジンは硬く歪みにくい、ポリカーボネート素材は歪みの反発が強過ぎて今回はABS樹脂を選びました。

ABS樹脂の特性として、金属より柔らかく、3Dプリントでの出力が容易で、加工しやすく、さらに耐衝撃性があります。

しかし、音において最も注目すべき特徴はその「柔軟性」です。ABS樹脂は、他の樹脂と比較して柔軟性が高く、曲げにも強い素材です。この柔軟性が、ABS樹脂が作り出す音のポイントです。

リア筐体内部では、振動板の動きによって空気が圧縮されます。一般的に、硬い素材は変形しにくいため空気の圧縮による反発性が強く、振動板を速くかつキレ良く動かします。
しかし、ABS樹脂は変形しやすいため、内部の空気をしっかりと圧縮させることができ、振動板を大きくゆっくり動かすことが可能です。この柔軟性によって、ABS樹脂は硬い素材よりも音圧(音量)を得やすく、太く力強い音を生み出し、特に中低音域でリッチな音を実現します。

一方で、ABS樹脂はタイトでキレのあるスピーディーな音やスッキリとした線の細い音を出すのは苦手です。MIROAK-IIは、この素材の特性を活かして、ダイナミックで力強い音を提供しています。解像感や繊細さはLOAKのようなイヤホンには及びませんが、ABS樹脂ならではの柔軟性を生かし、ムッチリとした中低域で、独自の音楽体験をお楽しみいただけます。

また、選ぶ木材でこのABS樹脂の作る音をどう変化させるかでイヤホンの音の仕上がりが変わってくるでしょう。

硬い木材を選べばリア筐体全体としての変形しさすさ(歪みやすさ)は小さくなるので少しだけタイトで早い音になります。

逆に柔らかい木材を選べばよりゆったりとした太い音になるでしょう。

私は花梨を選びました。密度はそれほど高くないけれど硬さがあるのでパリッとした明るい音になりやすく、ABS樹脂の柔らかさを木材の硬さで補ってバランスが良くなります。そのぶんムッチリとしたリッチな中低域は少しだけ軽減されますが、音に軽やかさも加わりとても聴きやすいです。

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