LOAK-PROTOTYPEの今後について

チタニウムの3Dプリント筐体を採用しているLOAK-PROTOTYPEについて、まだ発売してそれほど経過していませんが制作を進めているうちに1つ大きな問題点が出てきました。 今後このモデルを継続して制作するかどうかを考えたうえ、すぐにではありませんが筐体在庫の区切りがよいタイミングでこのモデルの受注を停止しようかと思っています。今回はその経緯を少しお話しいたします。

3Dプリントでのチタン出力の不安定さ

問題点というのは3Dプリントでチタンを筐体として出力した際に、出力されたチタン筐体の精度があまり安定しないところです。

CNC切削にくらべて3Dプリントはサイズの微妙な誤差があり、またシミができたり変形部分があったりなど、実際に使える筐体は出力した筐体の50%程度です。残りの50%は製品として使うことができないのが現状です。

50%の基準を満たしていない不合格な筐体は、きれいな円形を保っていなかったり、シミが生じたり、積層痕が不定期にムラになったりなどしています。

これを改善するには設計段階で筐体の厚みを増す、急なカーブなどをなるべく省いた設計にするなどが必要となりますが、何度かテストしたところ、筐体の厚みは音にかなり関係する部分なので厚くするにも限界があり、急なカーブなどをなるばく省いて設計しても積層痕などにムラがあり、その積層痕を研磨すればまたサイズに誤差が生じます。

なので現在はうまく出力できた筐体のみを選んで使っており、とても歩留まりが悪い状態です。

原価の問題

もともと3Dプリント出力でのチタン筐体はテスト段階で20-30%程度のロスがでることは何度か繰り返し制作したことから想定ずみで、それを計算しての価格設定にしていますが、実際に大量生産をするとテスト段階の数値を大きく超えるロスがでました。そしてそれは50%が今現在の平均値です。

そうなると利益を大きく圧迫し、制作してもあまり利益にならないモデルとなり、それが全体の経営状態を悪くします。

モノづくりとしての考え

イヤホンという製品を作るモノづくりをする人間としての観点から考えるととても複雑で、たとえ50%の良い状態の製品で利益が上がって事業として成り立つとしても、50%が使えない、廃棄しなければならない状態はあまり良くないと思います。特にチタンはとても貴重な素材で、その50%が使い道がない状態でモノづくりを継続するのは果たしてどうなんだ?と。 それならば無駄な廃棄やロスがなく100%使えるような作り方に切り替えたほうが健全だと私は考えています。

LOAKL-PRPTOTYPEの受注停止(予定)

これまでお話しした理由から近いうちにLOAK-PROTOTYPEの受注を停止しようと思います。日本国内でこれらのモデルの試聴機貸出を開始しなかったのもこれが理由です。今売れてもむしろ困るという状態だったので試聴機の貸し出しをしませんでした。

まだ筐体在庫はあるので(それほど多くないですが)、それらはしっかりと無駄なく使います。なのでその分のLOAK-PROTOTYPEはまだ制作可能です。在庫が尽きた場合は、どうしても作りたいという希望があれば作ることはできるかもしれませんが、価格が大きく上がると思います。

代替機としてのLOAK2Titaniumモデル

LOAK-PROTOTYPEモデルがなくなるとボディ筐体にチタニウムを使ったイヤホンがなくなるわけですが、すでにその変わりとなるモデルを制作するべくテストを開始しています。

3DプリントではなくCNC切削によるチタニウム筐体です。しかし、CNC切削では多軸加工を駆使してもあまり複雑な形状のものを作るのは費用的にも無理があるので、LOAK2のようなMMCX部分だけ樹脂になるようなものになるでしょう。

すでに筐体は仕上がっていて、価格はとても高価でしたがCNC切削でのチタニウム筐体を作ってくれるところがあり今後もそこにお願いしようと手配もしています。

ただし、問題は音です。

CNC切削でのチタン筐体は通常のチタンと性質的には変わりませんが、3Dプリントでのチタン出力筐体はCNCよりも硬いので通常のチタンとは少し性質が違います。3Dプリントのチタンは出力するマシンやフィラメントによって違いがあると思いますが、634EARSがお願いしているチタンの3Dプリントは通常のチタンより硬いのです。硬いというのは硬度がありカタチが歪まない(しならない)という意味です。

つまり、3DプリントのチタンはCNC切削のチタンに比べて歪みにくく振動板の空気の圧縮を素早く反発しタイトでキレのある音をだしますが、CNC切削のチタンは3Dプリントのチタンより歪みやすく強度がある(曲がりやすい、しなりやすいという意味)ので3Dプリントのチタンより振動板を大きくゆったりと動かすことになるため、ドライバ―からの出音はすこし変わってくるのかなと想像しています。

ここら辺はまだやってみないとわかりませんが、素材の特性を考えると音はおおよそ比較してどうなるかはわかるので、3Dプリントのほうがタイトでキレのあるスマートな音、切削のほうがすこし幅のある迫力のある音になるのではないかと予想されます。

輪郭がハッキリでて解像感やフォーカスの合った音という意味では明らかに3Dプリントのほうが良いのではないかと予想できますし、幅のある力強い音であれば切削かなと予想できます。


長くなりましたが、現在のLOAK-PROTOTYPE制作の今後について確定ではありませんが、現状をみると継続するのは難しいという感じです。

先にLOAK-PROTOTYPEを購入した方はおそらく音に関しては代替機よりは良いと思いますが、モノとしてのビルドクオリティはまた違ってくると思うので、交換したいという人には対応できるようにするつもりです。

ひとまず、ぼんやりとした話ではありますが、LOAK-PROTOTYPEが近いうちに無くなる予定だという話です。また詳細が分かり次第追ってお知らせできればと思います。

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