黒い筐体

イヤホンの試作を進めています。8iTEの後継機種です。

ステンレス素材を使いますが次は筐体を黒くしたいと思ってテストしています。

ピントが1つに合っているのでわかりにくいですが、右が電着によるメッキ塗装、左が酸化を利用した黒染です。

似ていますが結構違いがあり、
塗装は被膜分の厚みが増し筐体の硬さも変わるためステンレス削り出しと比べて音も変化がありました。おそらくリア筐体が塗装の厚み分歪みやすくなることによるものです。

これはドライバー(振動板)を動かすことを考えるとデメリットではありませんが、ステンレスの特性を活かして音作りをするうえでは常にこのことを考えなければならず少し厄介です。さらにリア筐体に木材などを使う場合はその素材の硬さも加わってきますから。

また塗装の場合は何かにぶつけて1ヵ所剥げれるとペリペリとした剥がれ方をします。実際に角の部分を削ってみるとほかの部分もはがれてしまいました。また角に塗装が定着しにくいです。

逆に黒染めのほうは寸法が変わらず表面の被膜が薄いため音は削り出しの状態と同じでした。とても扱いやすいです。さらに剥がれることがなく強固であり使い込むうちに擦れた部分は少しずつ色落ちするような風合いがでます。実際に左の染めによるものは金属磨きでエッジ部分を何度か磨き続けたものでエッジ部分に下地の色がすこし出てきています。

これは木材の杢目や木目であったり、真鍮や銅の着色ににた風合いや唯一無二のモノを楽しむという634EARSの製品の方向性ととても合っていると思っています。

また黒染め液などは安全性に問題のあるものもあって輸入が禁止されたりなどあるようですが、今回試した黒染めは、日本の企業が何十も培ってきた鉄の黒染め技術を応用させ、さらに装飾性を持たせた新たな技術で人体にも影響がなく口に含んでも安全です。処理液も禁止されている成分は一切使われていない(RoHSにも対応しています)ため、環境にもとてもやさしい処理でもあります。

素晴らしいですね。塗装のほうが黒が濃く仕上がりますが私はこの黒染めを気に入ってしまいました。おそらくこの技術を採用して次の筐体に施しデザイン性もこれまでのステンレス筐体とは少し違った色合いのものを作ろうと思います。

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