9iNEの詳しい解説

新しく発売された「9iNE」について少し詳しく解説いたします。

1) 製品コンセプト。
2) 筐体設計。
3) ステンレスの黒染め。
4) 多様なリア筐体(バックプレート)。
5) 各モデルの音の特徴。
6) 旧モデル8iTEとの違い。
7) オススメのモデル。

1) 製品コンセプト。

9iNEは8iTEというモデルの後継機です。そしてさらには8-634や89-634やROAKというかなり古いモデルから引き継がれてきたサウンドになります。 8iTEが現在は廃盤となってしまいましたのでその後継機として9iNEを開発しました。

新モデルとして新しい素材の振動板やD型ドライバーを採用することはもちろん可能ですが、古くから作ってきたこの音をカタチとして残したい気持ちもありまして8iTEの後継機として9iNEを作った次第です。

9iNEでは以前から受け継いできた低音と高音のトップをそろえて中低域もしっかりだすという634EARSらしいチューニングで幅広いジャンルの音楽を楽しめると思います。

2) 筐体設計

このイヤホンの設計の最大の特徴はD型ドライバ―がノズルの先端から極めて近い位置に設置できることです。ノズルの先端から3.5mmの位置にD型ドライバーがあります。これにより距離の減衰やノズル内の反射によるピークが抑えられフレッシュなサウンドを出すことができます。

筐体はMIROAKと同じような形状ですが全長が短くコンパクトになりながらもドライバーの背面部分に大きな空間を確保することができ振動板をしっかり動かしながらもリア部分のバックプレート素材を選べることで個性も出せるようにしています。

なるべく価格を抑えるために筐体の金属部分は1ピース構造、MIROAKやLOAKとリア部分バックプレートの直径は同じにしてMMCX部分とともに部品を共有するようにしています。

3) ステンレスの黒染め

筐体のステンレスには新潟三条の会社「株式会社テ―エム」の「玄(GEN)」というステンレスの黒染めを施しています。
 → 玄(GEN)ブランドページ
 → 株式会社テ―エム ステンレス黒染め・玄とは

メッキや電着塗装も試したのですが、筐体全部に施すと元のステンレス素材からの音がすこし変わることと、エッジ部分の塗装が剥げるとそこからペリペリと剥げてしまうことがありましたが、この「玄(GEN)」という技術は被膜がとても薄く金属そのものの質感をキープでき寸法がほぼ変わらないうえに剥がれないというメリットがあります。

またこの黒染めは酸化皮膜なので皮膜が剥がれ落ちることがなく人体にも影響がありませんので口に含んでも安全だそうです。また使っていくうちにデニムのように色落ちし経年変化も楽しめます。

4) 多様なリア筐体(バックプレート)

リア筐体のバックプレートには木材、ステンレス、真鍮、銅の大きく4種類があり、木材と真鍮と銅はそれぞれにまた種類があります。

真鍮と銅の金属着色にはMIROAKに引き続き、モメンタムファクトリー・Oriiの統技術を用いた着色を施します。真鍮はノーマルの削り出しと着色タイプ2種類、銅はすべて着色した3種類です。

 → モメンタムファクトリー・Orii
 → モメンタムファクトリー・Oriiによる真鍮と銅の着色について

5) 各モデルの音の特徴

基本的には、太めの低域を土台に繊細でスマートな中高域が特長的です。中高域は線が細めでスッキリしていますが低域はほどよくムッチリとしています。

・木材
数十種類の木材のなかからお好きな木材で作ります。木材の比重や硬さや油分など色んな要素によって音が微妙に変わってきます。木材にしか出せない音と個性が魅力的です。この9iNEのモデルの特徴がよく出るバックプレート素材だと思います。また木材によってよりスッキリもすれば、より太く暖かい音色にもなりますが、大きく変わるわけではなく全体の10-30%程度にしか影響を与えないような違いです。
※ベースとなるチューニングは「ローズウッド(インディアンローズウッドorチンチャン)」で製作しています。木材で迷われている方にはオススメの木材です。

・ステンレス
ステンレスは4つのモデルのなかで大きく音が違います。音の線がとても細くシャープで鋭い高域とスリムな中低域が特長です。中域は控えめで音にすこし距離があるような平面の広さがあります。いわゆるドンシャリタイプですが中域が少し遠く低域も他の素材よりスッキリしています。少し高域のピークはあるので好みは分かれるかと思いますが、高解像度であったりシャキッとした音が好きな方はハマると思います。

・真鍮
真鍮にはノーマル斑紋緑翠色(GREEN)、斑紋純銀色(ANTIQUE SILVER)の3タイプから選ぶことができます。木材を使ったモデルと同じチューニングですが真鍮のほうが音に濃さや重みがあります。木材よりももう少ししっかりとした音を好まれる方にはオススメです。

・銅
銅には斑紋ガス青銅色(BLUE)斑紋孔雀色(COPPER RED)斑紋荒し色(COPPER PINK)の3タイプから選ぶことができます。真鍮よりもマイルドで優しい音色です。高域は控えめで中低域は太さがあります。比較的あっさりとしていて少しウォームな音色です。聴きやすさがあります。

6) 旧モデル8iTEとの違い

旧モデル8iTEよりどのモデルもすこしフラットな傾向によった音だと思います。音は少し近くなり低域も高域も歪は少ないです。9iNE-Sは少し違ってドンシャリタイプなので8iTE-BWにかなり近いと思いました。

とても大きな変化というのが音の質感の部分でしょうか。そのままD型ドライバーを設置すると高域のロスがなくそれを加減しながら減衰させることで音の質感をコントロールできつつ高域を8iTEと同等かそれ以上まで出すことが出来ます。

8iTEではめいいっぱい高域を出した状態であの音だったので、そこをフィルター等で調整できる高域側の余裕があることはとても大きいです。現に9iNEのノズル内には隙間なくフルに内部の空間を使ってフィルターが設置されています。そのおかげで8iTEより音が上品で滑らかです。

7) オススメのモデル

私が4つの中でオススメするのは木材を使ったものです。この中で最も標準的なバランスで聴きやすさもあり軽さもあります。木材によって微妙に音が変わるので必ずしもそういうことはできないかもしれませんが、特にローズウッドを使ったものはほんの少しのウォームさと低音の膨らみ方がこのモデルの特徴をよく表していると思いました。

あとはより音を濃く重くしたい、よりマイルドにしたい場合は真鍮や銅の選択も良いと思います。よりシャキッとしたものを望む方はステンレスの9iNE-Sがよいかもしれませんね(ステンレスタイプは最も好が分かれると思います)

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