LOAK2(CL)がリリースされました。商品については634EARSの製品ページ(以下のページ)に記載しておりますので、こちらのブログではLOAK2(CL)の詳細や他モデルとの音の比較、リア筐体の木材について解説したいと思います。
【LOAK2(CL)の詳細】
LOAK2(CL)はMIROAK-IIの上位機種モデルという位置づけのイヤホンです。
筐体)
筐体の構成はウェブサイトの LOAK2のページ にも記載していますが以下の構成となっています。
フロント筐体:チタニウム
ボディ筐体:ステンレス(MMCX部分のみ樹脂)
リア筐体:木材各種、ステンレス、真鍮、銅(真鍮と銅はモメンタムファクトリー・Oriiの着色カラーあり)
チタニウムとステンレスはともに切削加工です。これまでのLOAKより形状が複雑なのでMIROAK-IIのように3Dプリント出力での制作も考えましたが、切削のほうが精度が高くLOAK2では完成度の高さを優先しました。
フロント筐体は旧LOAKとほぼ同じ形状ですが、内部構造がすこし違って、ドライバ―を固定する場所に薄いステンレスを組み込んでいます。チタニウムやアルミは振動減衰が低くドライバ―から「出た音」をノズルの先端へ伝えるのにとても良い素材ですが、ダイナミック型ドライバ―の振動を抑えることが苦手です。そこでドライバ―の接地面にステンレスを組み込むことでダイナミック型ドライバーの振動をしっかり抑え、力強い低音とブレのない音を出すことを実現しています。
MMCX部分は音に関係する筐体から外へ出した設計となっており、ドライバ―背面側は金属素材と木材で振動板の動きを調整するようになっています。ここだけ少し特殊な構造のため3Dプリントでの樹脂素材で制作しています。
ダイナミック型ドライバーの振動板はカーボン素材に変更しました。硬いけれどよくシナる(変形する、歪む)ので、速く大きく動きます。これにより反応の早いキレのあるシャープな音と幅のあるダイナミックな音が出せるようになっています。
【音質】
音は旧LOAK-TCをベースにしており、MIROAK-IIの上位モデルという音です。中高域は繊細でシャープながら低域は量感がありダイナミック。低域のトップと高域のトップをそろえた634EARSが過去に多くのモデルで採用したチューニングも取り入れています。
旧モデルとの比較)
LOAK-TCがベースとなっていますが、それよりも音がもうすこしタイトで高域のアタックが強いと思います。しかし、旧LOAK-T(CL)などと比べると音は少し太さがありマイルドでしょう。
LOAK2(OP)との比較)
LOAK2(OP)より音は太く、距離感が近いです。また低音が明らかに多いです。LOAK2(OP)のような開放感や広さはありませんが、そのぶん音の厚みがありエネルギッシュで力強い音です。
PROTOTYPEとの比較)
PROTOTYPEシリーズのなかでもPROTOTYPE01(LP01)はドライバ―部分が同じチューニングですので少し似ています。LP01は響きが多く少し軽やかさもありますが、LOAK2(CL)はもうすこし真面目で濃い音だと思います。低音も僅かですがLOAK2(CL)のほうが多いと感じるかもしれません。また、LP01の低音は少し弾力と輪郭があるのに対して、LOAK2(CL)はもう少し硬く勢いがある音だと思います。音の輪郭はLP01よりLOAK2(CL)のほうがすこしだけ太く強いです。
他のPROTOTYPEであるLP02やLP03はもっと音が太くウォームでゆっくりしている音なのでLOAK2(CL)とはある程度はっきりとした音の違いがあります。LOAKのなかではLP03がもっとも低音の量がありますが、それに次いで低音量があるのがLOAK2(CL)です。
【リア筐体の木材について】
このモデルは開放型のLOAK2(OP)よりもリア筐体の木材や金属の種類による音の違いが大きいです。それでも、どの木材を選んでもLOAK2(CL)の音には違いはなく、選んだ素材によって他のモデルになるほどの大きな変化はありません。しかし、聴き比べるとわずかな違いが判る程度には音に差があります。
タイトでカッチリとした音にしたければ、硬く密度の高い木材がオススメです。黒檀かそれ以上に硬いものがそれにあたります。
逆にもうすこしマイルドな音にしたければ、あまり硬すぎない木材がオススメです。ローズウッドかそれよりも柔らかい木材が良いでしょう。
軽やかさやスリムな音にしたければ、硬いけれど密度はそれほど高すぎない木材(密度に対して硬さのある木材)が良いです。例えばパドゥクなどがそれにあたります。
私はインディアンローズウッドでLOAK2(CL)を作りました。硬さも密度も標準的な木材で少しのウォームさとマイルドさがありますがバランスがとれています。
金属素材も選択が可能です。金属にはモメンタムファクトリー・Oriiによる着色金属も選択可能です。金属は木材より少し薄く加工し、中心を削って軽量化しています。そしてその削った部分には高反発素材を設置しています。これは塊の金属のままだと重さがあり、リア筐体内部の空気の圧縮による反発が強く音がキツくなりすぎるためです。 また、中心に設置してある高反発素材はリア筐体内部の圧縮された空気を適度に反発し、また適度に入射(吸収)することで、硬く歪みにくい(変形しにくい)金属による強い空気の反発をやわらげてくれるので、振動板の動きがタイトすぎず少し大きく動くことでダイナミックで量感のある音を出してくれます。