LOAK-PROTOTYPEについて

新しいLOAKがリリースされまして、少しずつ詳しい情報をブログでも発信していこうと思いますが、まずLOAK2と一緒にリリースされたLOAK-PRPTOTYPEについて、発売に至った経緯やどういった製品なのかという説明をしておきます。

1) プロトタイプとは?

通常、「PRPTOTYPE」という言葉は製品の開発段階で実験的なバージョンや初期の試作品を指し、未完成や欠陥があるイメージを持たれがちです。

しかし、LOAK-PROTOTYPEシリーズの「PROTOTYPE」は、試験的で実験的な要素を含みつつも、未完成な製品というわけではなく、新たな挑戦と革新に焦点を当てた製品という意味を込めています。

2) 開発された経緯

LOAK-PROTOTYPEシリーズはLOAK2の開発過程から生まれました。

製品のイヤホン筐体をテストするには、試作品を何度も作成し、修正を加える作業を繰り返す必要があります。このプロセスに適した製作方法は3Dプリントでした。3Dプリントは、金型や切削用の金属ブロックが不要で、必要なのは設計データと3Dプリンターとフィラメントのみです。

音質のテストを行うために、3Dプリントを使用してチタニウム、ステンレス、複数の樹脂で筐体を作成しました。その結果、チタンが音質的に優れた結果を示しました。
しかし、チタンは切削に向いておらず、高価です。切削を使用する場合、製品の価格は今の倍以上になるでしょう。一方、3Dプリントを採用することで、製品を迅速に製造し、価格を抑えることができます。

しかし、3Dプリントには積層痕やサポート材と呼ばれる支柱の痕跡が残る問題があります。これらを取り除くための研磨は難しい作業であり、完全に研磨すると表面がツルツルになり、微妙に寸法が変わってしまいます。さらに、研磨の均一性を維持することも難しく、個体差が生じます。これらの課題から、サンドブラストによる軽い研磨を採用し、積層痕を意図的に残し、ザラザラとした質感を保ちました。

ただ、この方法でも個体差が生じ、サポート材の痕跡が完全に消えない場合があり、微細な凹凸が完璧に整わないことがあります。
このため、LOAK2はステンレス切削製法を選択し、薄く加工することで似た音質を実現しました。

しかしながら、チタン筐体の音で作った同じイヤホンがあまりに音がよく、それならば必要数の倍の筐体を作って、状態の綺麗なものだけを選んで使うことで今現在できる最高の音を作ろうと思ったのがLOAK-PROTOTYPEを作ろうと思った経緯です。

ただし、チタン筐体のの3Dプリントでの製作はネガティブな面もあります。ステンレス切削と比べて、チタン筐体は表面処理やエッジの仕上げに雑な部分があることがあります。これらの要因も「PROTOTYPE」という名前の背後にある理由の一部です。

3) 発売に至った経緯

「PROTOTYPE」という名前は、新しい挑戦と革新を象徴します。しかしながら、製品は一定の品質を持ちながらも、ネガティブな側面も抱えていました。そのため、当初は製品の発売を考えていませんでした。

しかし、ある出来事を契機に、製品を販売するアイデアが浮かび上がりました。私は日本酒を愛し、多くの異なる種類の日本酒を楽しんでいます。その中で「プロトタイプ」と呼ばれる製品を何度か試飲したことがあります。

「プロトタイプ」の日本酒は、通常とは異なる材料や製法を使用したり、若手の酒造りのプロセスや新しいアプローチを試みであったり、市場に新たな風を吹き込むためにそれまでと違う味のものを作ったりなど、従来のものとは異なるものです。

これらの日本酒は通常の定番の商品とは異なり、ネガティブな側面や物足りなさを抱えることもありますが、美味しいものも多く、何よりも挑戦的な姿勢が魅力です。

私がLOAK2の開発を進めていた時、この経験から、開発中のイヤホンをLOAK-PROTOTYPEとして市場に提供することを考えました。なぜなら、LOAK-PROTOTYPEの音質は現時点で素晴らしいからです。

もちろん、今後も新しいアイデア、製造方法、材料などに挑戦し、より良い製品を目指しています。しかし、最終目標にのみ固執することなく、途中で生まれる素晴らしいものを無駄にしないべきだと感じたため、LOAK-PROTOTYPEを販売する決断に至ったのです。

4) 634EARSの最高のイヤホンのひとつとして

LOAK-PROTOTYPEはその名にもかかわらず、現時点では634EARSのラインナップで最高峰のイヤホンと言っても過言ではありません。

「プロトタイプ」という言葉に拘泥せず、むしろポジティブな視点でこの製品を捉えていただければ嬉しい限りです。

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